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中国税制コーナー:ユニラテラルAPAに簡易プロセスの導入④

これまで三回に亘って本年9月1日より適用開始の「ユニラテラルAPAの簡易プロセスの導入」規定である中国国家税務総局公告2021年第24号(以下「24号」といいます。)につき、その内容及び筆者自身の理解をご紹介しました。

今回は、①中国ユニラテラルAPAの現状、②24号のパイロットプロジェクトの実績及び③想定される24号の申出法人、及び④24号の活用について、書きたいと思います。

① 中国ユニラテラルAPAの現状
中国では、APA制度は税収の確実性を担保する重要なツールであると認識されているのみではなく、多国籍企業が安心して中国でのビジネスを継続するための環境整備策の一環としても考えられています。
そのような背景もあり、近年ユニラテラルAPAも増加傾向にあり、2019年度のユニラテラルAPA締結数は12に上って、ここ10年以来の最高水準となったようです。
ただ、APAの締結に必要な各プロセスは難易度が高く、人的リソースも限られていることもあり、申出から締結まで通常1年~3年以上の時間が掛かるものとされています。

② 24号のパイロットプロジェクトの実績
24号の公表に先立って深圳でパイロットプロジェクトが実施されました。
パイロットプロジェクトとされた2社と深圳税務当局は、ユニラテラルAPAを適用するための従来の6つのプロセスを3つに短縮させた上、わずか6ヶ月以内に第2プロセスである協議・締結を終えることができたようです。
今後24号の適用開始によって、第1プロセスである申請・評価の所要時間90日に第2プロセスの6ヶ月を加算して考えれば、最短で9ヶ月でユニラテラルAPAの締結が実現可能となります。

③ 想定される24号の申出法人
・国外関連取引金額が大きく、単一機能若しくは機能リスクが限定されている中国関連者
・利益水準が大きく左右される技術使用料や商標権使用料等のロイヤリティーの支払に係る国外関連取引に該当する無形資産取引を行う中国関連者
・過去特別納税調査を受けたことのある中国関連者
・過去ユニラテラルAPA若しくはバイラテラルAPAの実績があったものの、更新されておらず、かつ利益変動幅が大きくなった中国関連者
・バイラテラルAPAの締結に不確実性がある中国関連者

 

④ 24号の活用
理論上ユニラテラルAPAは、バイラテラルAPAと多国間APAと比較して、移転価格課税による二重課税の解消という観点では、必ずしもベストチョイスではありません。しかし、ユニラテラルAPAに簡易プロセスが導入されたこの24号は、ユニラテラルAPAのもつ、国家間の相互協議が必要とされない、他のAPAのない特徴に加え、申出から合意までの手順・所要時間を大幅に圧縮させることによって、ユニラテラルAPAの締結に関するタイムフレームが明確になり、納税者における税務リスクの管理、税務コストの管理の確実性に大きく寄与できると考えられます。
また、多国籍企業は親主導による移転価格ポリシーに基づく文書化システムをしっかり構築したうえ、事業活動拠点の所在国の移転価格税制及びその執行実務を分析し、費用対効果という観点でより適正なAPAの種類を選択すべきと思います。
新型コロナウィルス感染症の長期化に伴って世界情勢の見通しもより一層不透明を呈しています。各国経済も内向きになりつつある傾向にある中で、グローバルに事業を展開している多国籍企業は、より税務リスクを見据え、税務コンプライアンス遵守コストの管理に確実性を追求するために、事業拠点によってはユニラテラルAPAもベストチョイスになりうるのではないでしょうか。

以上四回連載で本年9月1日より適用開始の中国ユニラテラルAPAに関する新規定の公告24号をご紹介しました。
ご覧頂いた方々に少しでもお役に立てれば幸いです。
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<お願い>
本稿は、個人的理解に基づく解説ですので、実務にご活用いただく際は、必ず下記中国語の原文をご確認頂きますようよろしくお願いいたします。

ご質問がある方や原文の日本語訳が必要な方は、下記メールアドレスまでご連絡ください。

zhuying@ozzio.jp

24号及び24号解説文の原文:
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810825/c101434/c5167276/content.html
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810760/c5167283/content.html
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本ブログの内容は、筆者の個人観点であり、如何なる助言への使用による責任を負いません。
また、本ブログの内容は筆者の著作権に属しており、無断複写(コピー、スキャン、デジタル化など)を固くお断りします。

2021年08月31日

中国税制コーナー:ユニラテラルAPAに簡易プロセスの導入③

今回は、前回に続いて、9月1日より適用開始とされる国家税務総局公告2021年第24号の「ユニラテラルAPAを適用するプロセスの簡素化」(以下「24号」といいます。)の公布とともに公表された24号の解説文を参考にしながら、当公告の内容を理解する上で最も重要なポイントをお伝えできたらと思います。

■24号における申出法人の資格
ユニラテラルAPA申出事業年度の前3事業年度における各事業年度の関連者間取引金額が4000万元(約6.4億円)以上で、かつ下記いずれかの条件を満たした多国籍企業の中国にある関連者(以下「企業」といいます。)
 申出事業年度の前3事業年度における2016年第42号の公告である「関連者間取引の申告及同期資料の管理」(以下「42号」といいます。)に定められた文書化基準に沿って作成された同期資料を提出した企業
 申出事業年度の前10事業年度内に、APAの締結があり、かつその実施が合意内容通りに行われていた企業
 申出事業年度の前10事業年度内に、税務当局による特別納税調査を受けたことがあり、かつ調査等が終結した企業

■24号における申出法人の範囲
24号における申出法人の範囲は、下記の企業も含まれています。
 42号に規定する文書化義務の閾値以下であっても、申出事業年度の前3事業年度における同公告の文書化基準に沿って作成された同期資料を提出すれば、24号を適用することが可能です。

■24号によるコストシェアリングのユニラテラルAPA
24号の申出法人の資格を有する企業は、24号の簡易プロセスによるコストシェアリングのユニラテラルAPAを申出ることが可能です。この場合は、当該企業はその提出する同期資料の中にはコストシェアリングの内容を記載した特殊事項ファイルを含めなければなりません。

■24号の簡易プロセスによる合意が得られない場合の64号による再申出
24号の簡易プロセスの協議の結果、合意に至らない場合は、同簡易プロセスを申出ることはできませんが、64号による申出を行うことは可能です。この場合は、簡易プロセスで提出した資料はそのまま64号の申出にも使用可能とされています。
・24号の適用期間
24号では、簡易プロセスによるユニラテラルAPAの適用期間は、所轄税務当局が申出法人に申出の受理を表した「税務事項通知書」を送達した日の属する事業年度から起算して3~5事業年度とされています。

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24号及び24号解説文の原文:
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2021年08月31日

中国税制コーナー:ユニラテラルAPAに簡易プロセスの導入②

今回と次回は、9月1日より適用開始とされる国家税務総局公告2021年第24号の「ユニラテラルAPAを適用するプロセスの簡素化」(以下「24号」といいます。)の公布とともに公表された24号の解説文を参考にしながら、当公告の内容を理解する上で最も重要なポイントをお伝えできたらと思います。

■24号の適用対象APA:
24号におけるAPAプロセス簡素化の対象は、ユニラテラルAPAに限られており、バイラテラルAPAと多国間APAは適用除外です。

■24号と64号との関係:
24号はAPAプロセスの簡素化及び各プロセスに係る処理期限の設定によって企業の申出からAPA締結までの時間は大幅に短縮されますが、APAの審査・評価・実施・監督等に関する実質的な内容は64号の規定通りで変更ありません。

24号におけるユニラテラルAPAの適用プロセスは、64号での6つのプロセスを3つのプロセスに簡素化されました。
・64号における6つのプロセス
① 事前相談→②意思表示→③分析及び評価→④正式申請→⑤協議及び締結→⑥監督及び実施
・24号における3つのプロセス
❶申請及び評価→❷協議及び締結→❸監督及び実施
つまり、64号のプロセス②、③と④を24号のプロセス❶に格納され、64号のプロセス⑤と⑥はそのまま24号のプロセス❷と❸に引き継がれています。
なお、64号のプロセス①は24号では、省略されています。

■24号の特徴:
24号では適用プロセスの処理時間に期限を設けられています。
❶申請及び評価のプロセスにつき、税務当局は申出法人から申出書の提出を受けてから、90日以内に実地調査をし、機能リスク等の分析・評価を行った上、書面として申出に関する受理の有無を明確に記載した「税務事項通知書」を申出法人に送達しなければならず、受理しないと判断した場合は、その理由を付することを義務づけられています。

❷協議及び締結のプロセスにつき、税務当局は申出法人に申出の受理を明記した「税務事項通知書」を送達した日から6月以内に申出法人と協議を終えなければなりません。(=ユニラテラルAPAの内容に対して双方(申出法人と税務当局)の意見が一致すること)
双方が期限内に意見の一致に達しない場合は、当該簡易プロセスが終了するものとされます。

❸監督及び実施のプロセスにつき、64号通りに行われます。

次回は、今回に続き、24号における申出法人の資格、申出法人の範囲、適用期間等についてご紹介したいと思います。
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2021年08月30日

中国税制コーナー:ユニラテラルAPAに簡易プロセスの導入①

中国国家税務総局は、7月26日付で「ユニラテラルAPAを適用するプロセスの簡素化」を定める国家税務総局公告2021年第24号(以下「24号」といいます。)を公布し、2021年9月1日より適用開始としました。

24号は、BEPS行動計画14の勧告を取り入れた「APA管理等の最適化」を定める国家税務総局公告2016年第64号(以下「64号」といいます。)の内容を基に、一定条件を満たした多国籍企業の中国にある関連者(以下「企業」といいます。)とのユニラテラルAPAに限って、そのプロセスの簡素化を図り、申請からユニラテラルAPAの締結までの時間を大幅短縮させる、64号の特殊規定とも言えます。

64号及び24号でいうユニラテラルAPAは中国の納税者がその将来事業年度に亘って行う関連者間取引(中国では、国内関連者間取引も移転価格税制の適用対象になりますが、24号で言及されている関連者間取引は国外関連取引に限定されるものと思われます。)の価格設定の原則及び計算方法につき、中国税務当局との間で独立企業原則に基づく協議の上達した合意といいます。

移転価格課税に起因する二重課税の解消や国外関連取引を行う各関連者における法的確実性の確保という観点では、バイラテラルAPAや多国間APAが根本的問題の解決に繋がりますが、多国籍企業のビジネスモデル、各拠点の有する事業の特徴及びその所在地国における税務リスクによっては、国家間の相互協議が必須なバイラテラルAPAと多国間APAと比較して、ユニラテラルAPAは特に懸念される所在地国の税務リスクに早めに手当てできるメリットがあります。

新型コロナウィルス感染症の長期化に伴って各国の経済も少しブロック化になりつつあるように見えます。ユニラテラルAPAは、決してベスト選択ではありませんが、親会社主導の文書化の仕組みをしっかり構築されれば、バイラテラルAPAや多国間APAよりは、ユニラテラルAPAは、低コストで、かつ効率よく、多国籍企業グループ全体の税務リスクの軽減に寄与できるツールになるかと思います。

今般は中国APAに関する一般規定である64号に基づき、ユニラテラルAPAのみを対象に簡易プロセスを導入されたのはこの24号です。中国に拠点を有する多国籍企業は今後どのように24号を活用するのかが注目されます。

次回は、24号の内容を少しご紹介したいと思います。

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2021年08月29日

第十回:無形資産取引の特定について④

 前回は、下記ⅰの無形資産取引につき触れましたが、今回は、ⅱの棚卸資産取引や役務提供取引などの他の取引を通じて行われる取引を書いてみたいと思います。

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 無形資産取引の分類:
 ⅰ  所有・支配下の無形資産及びそれに係る権利の譲渡若しくは使用許諾に関する取引
 ⅱ 上記以外の無形資産取引で、棚卸資産取引や役務提供取引などの他の取引を通じて行われる取引
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 ⅱでいう無形資産取引は、ⅰに比べて会社自身が認識しにくい、「身を隠している」無形資産取引ともいえます。
 それがゆえに、会社の文書化にも反映されておらず、税務調査時に初めてそのような無形資産取引の存在を指摘され、それに起因する課税処分を受けることが多いかと考えられます。

 また、ⅱでいう棚卸資産取引又は役務提供取引を通じて行われた取引は、更に下記の2つに分類できるかと思います。

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 ❶無形資産の使用が伴う棚卸資産取引又は役務提供取引
 ❷棚卸資産取引又は役務提供取引に伴う無形資産取引
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 ❶は、無形資産の使用があることから、その使用による価値の増加が棚卸資産取引又は役務提供取引の対価の一部を構成するものと考えられます。

 無形資産の使用が伴う棚卸資産取引の例を挙げます。
 製造業を営む多国籍企業の日本親会社は、企業グループ内のすべての製造ノウハウを有し、その製造ノウハウこそグローバル市場で高い競争力を維持でき、グループ全体の超過収益に貢献するものと仮定します。
 A国にある国外関連者であるS社は、日本親会社から調達した基幹部品を自社で簡単な加工を行い、その仕上げた完成品をA国市場の消費者に販売し、同市場で同種又は類似の完成品を製造販売している競合他社より、著しい高い利益を獲得しています。
 この場合では、日本親会社と子会社S社間の基幹部品に係る棚卸資産取引には、その完成品の競争力を生み出す製造ノウハウの移転が含まれていることを認識すべきです。
 ただ、S社がここで認識すべきその無形資産取引は、S社への無形資産の移転ではなく、あくまでも親会社から仕入れた基幹部品のその製造過程において親会社の無形資産が使用されたことで、棚卸資産取引の価値がその分だけ増加したので、棚卸資産取引として、認識することとなります。つまり、棚卸資産取引の対価には、その無形資産の使用によって高められた価値が反映されなければなりません。

 ❷でいう棚卸資産取引又は役務提供取引に伴う無形資産取引は、棚卸資産取引又は役務提供取引とともに、無形資産又は無形資産の権利の移転があったことを意味します。

 役務提供取引に伴う無形資産取引の例を挙げます。

 例えばえば、上記の例における子会社のS社が行う加工は、親会社が有している高い技術を必要とします。S社は、親会社から提供された、その加工に必要な技術が記載された図面に基づき、親会社から派遣された技術者の指導を受けながら、一定基準の完成品まで仕上げています。その完成品がS社の所在国のA国で高い競争力を生み出し、同市場の競合他社より高い収益を獲得していれば、その超過収益は、親会社から派遣された技術者が行った役務提供取引とともに、親会社から提供された図面による技術ノウハウといった無形資産の移転があったことに由来するものと考えられます。
 従って、この場合は、S社は、役務提供取引とは別に無形資産取引があるものと認識すべきです。

 以上、無形資産取引の分類について書いてみました。次回は、無形資産取引の対価の把握について、触れてみたいと思います。
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2021年05月24日

第九回:無形資産取引の特定について③

今回は、2.無形資産取引について述べたいと思います。
無形資産に係る国外関連取引(以下「無形資産取引」を言います。)は、下記の2つに分類できます。

ⅰ 所有・支配下の無形資産及びそれに係る権利の譲渡若しくは使用許諾に関する取引
ⅱ 上記以外の無形資産取引で、棚卸資産取引や役務提供取引などの他の取引を通じて行われる取引

ⅰについては、法的所有権を有し、又は自社支配の下で管理されている特許権、商標権等に係る譲渡取引若しくは使用許諾取引を意味しています。iに係る無形資産は、会社自身がその開発等に関与し、契約等によって管理されている場合が多いため、無形資産取引のうち、比較的に認識されやすいものと言えます。

ここでいう所有とは、法的所有に限らず、その無形資産の形成等(開発【Development】、

改良【Enhancement】、維持【Maintenance】、保護【Protection】及び活用【Exploitation】

=実務上、【DEMPE】と言います。)に必要な機能に対する貢献度を反映する一定の合理的基準を適用した結果としての「経済的所有」も含まれています。

例えばA国にあるP社は、B国にあるP社の子会社S社と共同に無形資産の開発を行うことを例とします。P社はS社から研究に必要なすべての資金の提供を受けながら、設備・人員を揃えて企画案から研究の実行まで行い無形資産を完成させた場合は、仮にS社は自分の名義でその無形資産を登記し自ら法的所有者になれたとしても、その無形資産の形成等に大きく貢献したP社は経済的所有者として認定されることによって、その無形資産の商用化の利益はその無形資産の形成等に対する貢献度に応じてP社とS社間で配分されるのが移転価格の考え方です。

なお、経済的所有という概念は、OECDの移転価格ガイドラインにおいては、明記されておりませんが、価値創造地に課税すべきというBEPS行動計画の理念が全面的に同ガイドラインに取り入れられたことを考えれば、実務上は、無形資産の真の所有者、つまり、超過収益の帰属先は、「経済的所有」の構成要素(DEMPE)で判断されるものと思います。
この点においては、日本移転価格事務運営要領における調査において検討すべき無形資産については、無形資産の形成、維持または発展への貢献が言及されています。

次回は、無形資産取引のうち、棚卸資産取引や役務提供取引等に「身を隠している」、会社自身が認識しにくい、上記ⅱの無形資産取引を書きたいと思います。

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2021年05月09日

寄り道タイム①

     OECDの移転価格ガイドライン及び日本移転価格税制上の無形資産に関する考察

第七回と第八回で、日本移転価格税制上の無形資産を中心に記述しましたが、今回は、それの補足として、OECDの移転価格ガイドライン(2017年版)(以下「TPG」とします)における無形資産についても触れた上、両方の定義を踏まえて、無形資産の特徴をまとめてみたいと思います。

TPG上の無形資産の定義(出典:TPG日本租税研究協会の仮訳 パラ6.6 )
有形資産や金融資産ではなく、商業活動で使用するにあたり所有又は支配することができ、比較可能な状況での非関連者間取引においては、その使用又は移転によって対価が生じるもの。

日本移転価格税制上の無形資産の定義(措法66の4⑦二号、措令39の12⑬)
「無形資産とは、特許権、実用新案権、その他の資産のうち有形資産及び金融資産(現預金、有価証券等)以外の資産で、その譲渡・貸付等の取引が独立の事業者の間で通常の取引条件に従って行われるとした場合に対価が支払われるべき資産をいいます」

TPG上の無形資産と日本移転価格税制上の無形資産(以下「TP無形資産」とします)
日本移転価格税制上の無形資産は、TPG上の定義に準拠して令和元年の税改正により法令で定義されたものですので、文言は少し異なるものの、TPG上の無形資産と同じ解釈になるかと思います。

TP無形資産の特徴
TPG及び日本移転価格税制上の無形資産の定義を踏まえて、TP無形資産の特徴を下記通りまとめてみました。
・所有又は支配可能な有形資産及び金融資産以外の資産
・その使用によって同業他社より優位な競争力を有する、大きな経済的便益を生み出すと見込まれる無形資産(所得の源泉となる、重要な価値をするものと言い換えられます。)
・比較可能な第三者間取引で対価が支払われるべき無形資産
・TP無形資産の形成は会計における資産の計上が行われていないことがあることから、会計のBS以外に存在することが多い。
・会計上の無形資産は、上記の特徴がなければ、TP無形資産にはなりません。

TPG上の例示(出典:TPG日本租税研究協会の仮訳 パラ6.6 )
特許、ノウハウ・企業秘密、商標・商号・ブランド、契約上の権利・政府の認可、無形資産に関するライセンス・類似の限定的な権利


TP無形資産の範囲
TP無形資産の範囲は、下記の通りと考えています。
・TPG上の例示は、参考用の例示にすぎず、無形資産の特定は、範囲云々よりは、個別事案で、上述の無形資産の定義(特徴)を踏まえて、判断すべきものと考えています。
・TPG上の例示は無形資産の定義(特徴)でいう条件を満たさない場合は、TP無形資産にはなりません。
 例えば、通常の企業活動中においては、どの企業も何等かの製造・販売等のノウハウを有するものと考えられていますが、それらの製造・販売等のノウハウは同業他社と比較して特にユニークさがなく、特段高い利益が生み出せない、所謂汎用ノウハウに止まっているものであれば、TP無形資産として認識されないこととなります。
・TP無形資産は、単独的に移転できる、個別に認識されるものがあれば、他の資産とともに移転されることによって、その他の取引に含まれるものとして認識されるものもあります。
例えば、製造技術が蓄積されている製品に係る棚卸資産取引を例とします。当該棚卸資産の販売価格から販売利益を控除した後の売上原価には、通常の材料費、人件費、減価償却費等の経費以外に、製造技術が含まれていることが考えられます。その技術は製品製造の過程で必要なものの、製品の原価と切り離せないため、棚卸資産取引を通じて、その対価が回収されることとなります。従って、TP無形資産は、個別移転の可能性がなくても、無形資産の存在(使用等)は否定できない場合があります。

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2021年04月18日

第八回:無形資産取引の特定について②

今回は、「特定無形資産」について述べたいと思います。
特定無形資産は、英語「Hard-to-value- intangibles」から由来したもので、評価困難な無形資産と直訳することができます。つまり、前回記述した無形資産の中でも、とりわけ、価値の評価が困難で、かつ、類のないユニーク性を有しながら、非常に高い価値創造に貢献することから、多国籍企業グループ間の利益配分に大きな影響を与えるような無形資産を指しています。
巨額な収益を生み出す力があって、かつ、価値の評価が困難だからこそ、恣意性の高いと思われるグループ間の取引を通じる利益移転が生じやすく、その結果による税源浸食の度合も深刻になりがちです。
例えば、法人税率の高いA国にある親法人Pから法人税率の低い国BにあるPの子会社SにPの開発コストのみで譲渡されたPの所有していた無形資産がその譲渡後にSの商業化によって巨額の収益を生み出したケースは利益移転による税源浸食の定型的な例です。このケースでは、当初の譲渡価格が過少であったため、利益は法人税率の高いA国から法人税率の低いB国に移転され、国家間の税源浸食が生じてしまったことが明らかです。
従って、そのような税源浸食の深刻さから、OECDの加盟国である日本もBEPS行動計画を全面的に取り入れたOECDの移転価格ガイドライン(2017年版)に沿って令和元年の税改正により、その「特定無形資産」を対象とする無形資産に係る国外関連取引に対して、従来議論されていた「所得相応性基準」に相当する価格調整措置の導入に踏み切りました。
価格調整調整措置による移転価格の課税は、簡単に言えば、課税当局は納税者の取引後(通常税務申告後)に、その取引後に移転された無形資産の使用による収益の実績等を参考に推定した価格を独立企業間価格とみなし、その独立企業間価格と納税者が申告した当初の取引価格との差額を課税ベースに、納税者に対して追徴課税を行う課税方法で、実質上の推定課税です。
ただ、取引価格の算定の難しさによる利益配分の歪みの程度が一定基準以内に収まった場合または事前に予測利益等の確実性を十分考慮した文書化を通じて、課税当局に対して真実的かつ客観的な情報開示したと認められる場合は、上記価格調整措置の適用はないとされます。

次回は、無形資産に係る国外関連取引について述べたいと思います。


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2021年04月07日

第七回:無形資産取引の特定について

今回は、移転価格税制における対象取引の一つである無形資産に係る国外関連取引(以下「無形資産取引」をいいます。)の特定について書きたいと思います。

無形資産取引を特定するには、下記3つの要素を把握することが必要です。
1. 無形資産の定義・範囲
2. 無形資産取引の範囲
3. 多国籍企業グループのビジネスモデル及びその価値創造に関連する無形資産に係るビジネス戦略

まず、1. 無形資産の定義・範囲については、下記通り令和元年の税制改正によって法整備されております。

(措法66の4⑦二号、措令39の12⑬)
「無形資産とは、特許権、実用新案権、その他の資産のうち有形資産及び金融資産(現預金、有価証券等)以外の資産で、その譲渡・貸付等の取引が独立の事業者の間で通常の取引条件に従って行われるとした場合に対価が支払われるべき資産をいいます」

上記の下線部分にフォーカスして考えれば、移転価格税制上の無形資産は、第三者間の取引において商業的価値が認められる有形資産と金融資産以外の資産ということができます。
つまり、移転価格税制上の無形資産の範囲は、会計上の無形資産の範囲に限定されておらず、会計上の無形資産も直ちに移転価格税制上の無形資産になるわけでもありません。移転価格税制上の無形資産は、同業他社より高い競争力を有し、所得の獲得に貢献できる独自のユニークさを有しているのが特徴です。例えば、収益の増加に貢献する独自の販売網、費用の削減に貢献する独自の製造プロセスが移転価格税制上の無形資産に該当します。

更に、無形資産のうち、「特定無形資産」という特殊のものがあります。
次回は、この「特定無形資産」について述べたいと思います。

 


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2021年04月07日

第六回:重機I社に対する移転価格課税の事案から考えたもの③

今回は、無形資産取引に対する移転価格の課税強化の動向を見据えて、納税者の視点でどのように考え、どういう対策を打つべきかを述べたいと思います。

4)納税者の視点で考えた場合
多国籍企業で、技術等の無形資産を有する日本親法人は、移転価格課税による追徴税額が巨額になりがちな無形資産取引に対しては、令和2年4月1日から適用開始となった無形資産取引に関する特にその移転価格の課税に起因する多大な経済的二重課税の負担を十分に認識し、自社の無形資産取引の整理・整備(文書化)を早いうちに着手すべきです。

無形資産取引の認識及びその独立企業間価格の算定については、移転価格税制上の対象取引の中でも、他の国外関連取引と比較して、難関と言われています。その難しさは、課税当局にとっても同様のものと言えます。ただ、独立企業間価格の算定に欠かせない情報収集の観点からは、課税リスクを心配するよりはむしろ、取引内容等を誰よりも熟知している納税者こそは、その潜在的リスクを積極的に自ら洗い出し、必要に応じて、事前に自己防衛策を講じてリスクに備えられる有利な立場にいるかと著者は思います。

具体的に、その有利な立場をどのように利用し、とりわけ無形資産取引に係る潜在的リスクを軽減させることができるかについて、述べたいと思います。

手順としては、大きく分けると、下記二つとなります。
❶無形資産取引の有無を特定すること
❷必要に応じて文書化を行うこと

次回は、❶について、著者の私見を含めて書きたいと思います。

 

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2021年03月28日

第五回:重機I社に対する移転価格課税の事案から考えたもの②

前回I社課税事案から感じた疑問を述べましたが、今回は、同事案から著者が予測した今後の移転価格課税の動向について、書きたいと思います。

2)I社事案から見えたもの
著者はI社事案からは、今後日本において無形資産取引に対する課税が強化されるものと推測しています。背景と理由は下記の通りです。
・世界的に見れば、技術等の無形資産を有する先進国における移転価格課税の対象は、従来の棚卸資産取引から無形資産取引や役務提供取引にシフトしてきました。日本も同様に考えられます。
・BEPS行動計画の勧告を受け、日本においても無形資産取引に対する課税強化に係る法令等の改正も行われ、令和2年4月1日から適用開始しました。
今後、特に技術等の無形資産を有する日本親会社に係る無形資産取引の課税事案が増加することが予測されます。
・無形資産取引は企業自身が認識していないものが無形資産と認定されたことが多いことから、文書化の準備や調査対応も往々にして不十分でより課税されやすい状態であるのが想定されます。

3)課税当局の視点で考えた場合
 コロナ禍で深刻な財源不足が生じる中で、課税当局は、税源を確保するために、効率よく課税を行うことが必要かと思われます。そのような状況においては、文書化等の自己防衛策が講じられていないことが多く、かつ、移転価格税制が適用された場合の追徴税額が巨額になりやすい無形資産取引は、課税当局の課税強化の方針に即し、もっとも「良い」調査のターゲットとなりやすいものといえるでしょう。

次回は、無形資産取引に対する移転価格の課税強化の動向を見据えて、納税者の視点でどのように考え、どういう対策を打つべきかを述べたいと思います。


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2021年03月25日

第四回 重機I社に対する移転価格課税の事案から考えたもの①

 

「事案概要」
東京国税局はI社に対して2016年3月期までの4年間におけるI社とそのタイにある国外関連者である子会社との国外関連取引において特許権使用料率が低すぎたことを理由に海外に利益移転があったことを認定し移転価格課税を行いました。
更正処分対象とされる増差所得額は100億に上り、法人税や過少申告加算税を含めた追徴税額は25億円となりました。(参考文献:日本経済新聞 2021年1月23日朝刊)

「I社の主張」
I社は追徴税額を納付した上、国の更正処分に対して全額取消しを求めて審査請求を行いましたが、2020年3月に国税審判所から棄却されたため、地裁に提訴しました。(参考文献:日本経済新聞 2021年1月23日朝刊)

「著者が考えたもの」
1)疑問
通常移転価格課税が行われるとその課税された取引に対して必ず二重課税が生じてしまうため、その二重課税を解消するためには、法的手段(訴訟)と相互協議が考えられるが、記事では、地裁に提訴したとしか記載されていないのはなぜでしょうか。
日本とタイとの間では、相互協議を可能とする租税条約が締結されており、かつ実務上も相互協議が行なわれているようです。会社は裁判で全額取消しを求められるほどの根拠があるのを除き、二重課税額のインパクトから考えれば、訴訟よりは、相互協議のほうがより良い結果が得られるものと考えられます。
今後事案の進展を観察していきたいと思います。

次回は、I社課税事案から著者が予測した今後の移転価格課税の動向について、述べたいと思います。

 

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2021年03月25日

第三回:BEPS行動計画とCRSについて

現在グローバル範囲での租税回避の対抗策としては主にBEPS行動計画とCRSの二つです。
両者の共通点としては、BEPS行動計画とCRSのいずれも、税源浸食及び利益移転に係る租税回避行為に対抗するという共通理念の下で、OECD主導によって考案されたグローバル対抗策です。
両者の相違点としては、BEPS行動計画は、グローバルに事業を展開する多国籍企業をターゲットとする法人版租税回避の対抗策であることに対して、CRSは、グローバルに資産、特に金融資産を有する個人をターゲットとする個人版租税回避の対抗策です。

BEPS行動計画とCRSの背景は、税の視点に絞って簡単に言うと、特に90年代から問題視されてきた多国籍企業や富裕層の大胆でかつ大規模の租税回避行為によって生じた国家間の税源配分の不公正、納税者の税負担の不公平を是正するためのものです。

コロナの影響による深刻な財源不足を補うためにも、各国は租税回避行為を阻止する理念とするBEPS行動計画及びCRSを通してより一層の課税強化を行うことを推測しています。

次回は、第1回で取り上げたI社の課税事案について、著者の個人的観点を述べたいと思います。

 

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2021年03月24日

第二回:国際課税の強化と日本の取組み②

 国際課税の強化と日本の取組みとして、前回の法人関連に続いて、今回は個人関連の動向を書きたいと思います。

 2月初旬の日経記事では、国税庁がCRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)を通じて入手した情報の活用によって、海外資産を有する富裕層の所得税、贈与税の申告漏れを突き止められたことがありました。同記事によると、2021年1月時点で国税庁は84カ国・地域から約219万件の海外口座の情報を入手できたようです。

 今後情報量の増加が見込まれ、その情報活用法の確立によって、海外に資産を有する富裕層に係る所得税・相続税・贈与税の課税強化が予測されます。
 また、CRSを考案したOECDは、暗号資産(仮想通貨)は租税回避に使われやすいということで、今後暗号資産(仮想通貨)もCRSの対象に加えることを検討しているようです。日本はOECD加盟国であるため、OECDのその動向に対応できるように今後、関連法整備も進められるものと考えられます。

 次回以降は、国際課税の強化と日本の取組みの動向を踏まえて、納税者が課税リスクを軽減するために取るべき対応策について論じていきたいと思います。

(参考文献:日本経済新聞記事)

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2021年02月08日

第一回:国際課税の強化と日本の取組み①

 近年、専門分野での実務や研究のほかに、新聞記事からもグローバル範囲における各国の国際租税回避に対する取り組みが一段と強化されてきた印象を受けます。
日本においても法人及び個人の両方に視野を入れる国際課税の強化が進められていることは直近の新聞記事で垣間見ることができます。

ここでいう法人と個人は、それぞれ主に多国籍企業と一定の海外資産を有する富裕層の個人を指します。
 法人関連事案としては、1月末の日経記事では、重機大手(以下「I社」)が東京国税局と移転価格課税を巡って現在係争中という記事がありました。
【筆者が認識した事案の要約】
 東京国税局はI社に対してI社とそのタイにある国外関連者である子会社との国外関連取引において、部品の輸出価格及び特許権使用料の料率が低すぎたことを理由に海外に利益移転があったことを認定し移転価格に係る更正処分を行いました。
 更正処分対象とされた増差所得額は100億に上り、法人税や過少申告加算税を含めた追徴税額は25億円であったということです。
 上記更正処分に対し、I社は、追徴税額を納付したものの、国の更正処分に対して全額取消しを求めて審査請求を行いました。しかし、昨年3月に国税審判所から棄却されたため、I社は、地裁に提訴し、現在国(東京国税局)と係争中です。

 次回は、国際課税の強化と日本の取組み (個人関連)を掲載する予定です。

 (参考文献:日本経済新聞記事)

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2021年02月07日

国際課税について連載でブログ始めます

 近年、国際的に組織的な租税回避の対抗措置といえば、まず挙げられるのは、BEPS行動計画とCRSだと思います。

 BEPS行動計画とCRSのどちらも、国家間の課税権分配と深く関係しております。COVID-19の影響で陥った深刻な財源不足を補ったり、経済再建のための財源確保をする上では、今後各国によるBEPS行動計画とCRSの税務執行が強化されると推測できます。

 BEPS行動計画のうちの移転価格文書化の取組みについては、昨年12月中旬にOECDからCOVID-19関連のガイドラインが公表されました。今後、日本はそれに沿って実務指針の作成が想定されます。

 また、昨年7月に東京国税局を中心に国際課税の組織再編が行われたこともあって、今後、移転価格をはじめとする国際課税はより強化されるでしょう。
 

 今後、ブログにおいて不定期にBEPS行動計画やCRSに関して自分の考えを記載していきたいと思います。ブログを見て下さる方々にとって一つの参考材料にでもなれば幸いです。
 なお、ブログは国際租税にご興味のある方と交流の場として、私と異なった視点などをぜひご意見をお寄せいただけたらと思います。

メールアドレスは、下記通りです。
 zhuying@ozzio.jp

 

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2021年02月07日

中国の成長率は回復

中国の成長率はコロナ前のレベルに回復し、昨年においては主要国で唯一プラス成長とのことで、このままいくと28年には米中のGDPが逆転するとの予測も出ています。そういえば米国もつい先日に新大統領体制になりました。昨年まで米中関係もいろいろありましたが、お互いに大国同士なので立場的に難しいところもあるのでは思いますが、今後両国が少しでも協調できる分野が増えてくればと願っております。(参考文献:日経新聞記事)

2021年01月24日

上海港のコンテナ取扱量は世界1位をキープ

各国の貿易規模を反映している指標の一つとして海上コンテナの取扱量が挙げられると考えています。専門の新聞記事によると20年の上海港のコンテナ取扱量は4350万TEU(20フィート換算)とのことで11年連続世界1位になるのは確実とのことです。中国にはコンテナ港がいつくかありますが、19年の実績によると世界10位以内の中に香港含め中国の港は7つを占めており、中国域内で取り扱われている貨物はかなりのボリュームであることが分かります。現在、国際輸送業界も新型コロナの影響でかなりタイトな状況となっているとのことで、1日も早く新型コロナの問題が収束して、各国間の貿易が活発化していくことを願っております。(参考文献:日本海事新聞)

2021年01月23日

アルムナイ・ネットワーク

転職が多い米国ではアルムナイ(卒業生)ネットワークと呼ばれる交流組織が盛んで、日本も同じように活発になりつつあるという記事を読みました。確かに日本は元々終身雇用型が基本となっている為、一度会社を辞めてしまうとその会社との関係が断たれてしまうケースがほとんどであったが、昨今の人材不足に加え働き方も多様化している環境から会社も自社の社員で全てを賄うことも困難になっており、中途退職者つまりアルムナイのネットワークと対等の立場で業務を提携することで双方がウィンウィンの関係を築くことに繋がるのではないかと感じています。また人生100年時代も到来し、仕事を含めた人々の生活の豊かさにも寄与するのではないかと思います。(参考文献:日経新聞記事)

2021年01月18日

カーボンゼロについて

新しい年になりましたが、今全世界におかれている最大の課題の一つとしては、二酸化炭素などの温暖化ガスの排出をいかに削減しゼロを実現していくことにあるかと思います。いわゆるカーボンゼロのことです。世界各国もこの分野で競い合っており、中国においても今では世界の太陽光発電量の約3割程度を占めるまでになり、これからも各国の投資額は拡大傾向になっていくのではと予測されます。ただ、地球環境問題はもはや人類共通のテーマであり、日常生活においても一人一人が意識して取り組んでいく必要があるかと思います。(参考文献:日経新聞記事)

2021年01月02日

新年あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。(新年好!)

昨年はコロナ禍の厳しい状況が続きましたが、今年こそは明るい年になるように頑張っていきたいと思いますので、引続きご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

2021年01月01日

中国の来年の成長率は8.2%予測

2021年の中国の国内総生産(GDP)の増加率の予測平均値は8.2%となり、かなり久しぶりに高い水準の伸びになるようで、非常に嬉しいニュースだと思います。新型コロナの影響で世界的にかなり厳しい状況になっていますので、これを一つのきっかけにして日本も含めて世界各国の経済回復につながっていくことを心から願っております。(参考文献:日経新聞記事)

2020年12月29日

中国の輸出管理法について

2020年はコロナ禍の大変な年でしたが、米中間もいろいろとありました。つい先日米国の輸出管理法への対抗措置とみられますが、中国においても輸出管理法が施行されました。具体的な対象品目等は公表されてはいないので何とも言えませんが、今後日中間の企業における貿易についてもどのような影響が出てくるのか注視していく必要があるかと思います。(参考文献:日経新聞記事)

2020年12月28日

RCEP署名について

先月の記事を見ましたが、日本や中国を含めた15か国が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名したとのことで、非常に嬉しいニュースです。特に中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、今後さらに日中間の貿易が円滑に進んでいくことを期待しております。(参考文献:日経新聞記事)

2020年12月27日

本日ホームページ開設しました

本日当事務所のホームページを開設しましたので、これから随時ブログも更新していきますので、よろしくお願いします。

2020年12月18日