第十回:無形資産取引の特定について④
前回は、下記ⅰの無形資産取引につき触れましたが、今回は、ⅱの棚卸資産取引や役務提供取引などの他の取引を通じて行われる取引を書いてみたいと思います。
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無形資産取引の分類:
ⅰ 所有・支配下の無形資産及びそれに係る権利の譲渡若しくは使用許諾に関する取引
ⅱ 上記以外の無形資産取引で、棚卸資産取引や役務提供取引などの他の取引を通じて行われる取引
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ⅱでいう無形資産取引は、ⅰに比べて会社自身が認識しにくい、「身を隠している」無形資産取引ともいえます。
それがゆえに、会社の文書化にも反映されておらず、税務調査時に初めてそのような無形資産取引の存在を指摘され、それに起因する課税処分を受けることが多いかと考えられます。
また、ⅱでいう棚卸資産取引又は役務提供取引を通じて行われた取引は、更に下記の2つに分類できるかと思います。
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❶無形資産の使用が伴う棚卸資産取引又は役務提供取引
❷棚卸資産取引又は役務提供取引に伴う無形資産取引
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❶は、無形資産の使用があることから、その使用による価値の増加が棚卸資産取引又は役務提供取引の対価の一部を構成するものと考えられます。
無形資産の使用が伴う棚卸資産取引の例を挙げます。
製造業を営む多国籍企業の日本親会社は、企業グループ内のすべての製造ノウハウを有し、その製造ノウハウこそグローバル市場で高い競争力を維持でき、グループ全体の超過収益に貢献するものと仮定します。
A国にある国外関連者であるS社は、日本親会社から調達した基幹部品を自社で簡単な加工を行い、その仕上げた完成品をA国市場の消費者に販売し、同市場で同種又は類似の完成品を製造販売している競合他社より、著しい高い利益を獲得しています。
この場合では、日本親会社と子会社S社間の基幹部品に係る棚卸資産取引には、その完成品の競争力を生み出す製造ノウハウの移転が含まれていることを認識すべきです。
ただ、S社がここで認識すべきその無形資産取引は、S社への無形資産の移転ではなく、あくまでも親会社から仕入れた基幹部品のその製造過程において親会社の無形資産が使用されたことで、棚卸資産取引の価値がその分だけ増加したので、棚卸資産取引として、認識することとなります。つまり、棚卸資産取引の対価には、その無形資産の使用によって高められた価値が反映されなければなりません。
❷でいう棚卸資産取引又は役務提供取引に伴う無形資産取引は、棚卸資産取引又は役務提供取引とともに、無形資産又は無形資産の権利の移転があったことを意味します。
役務提供取引に伴う無形資産取引の例を挙げます。
例えばえば、上記の例における子会社のS社が行う加工は、親会社が有している高い技術を必要とします。S社は、親会社から提供された、その加工に必要な技術が記載された図面に基づき、親会社から派遣された技術者の指導を受けながら、一定基準の完成品まで仕上げています。その完成品がS社の所在国のA国で高い競争力を生み出し、同市場の競合他社より高い収益を獲得していれば、その超過収益は、親会社から派遣された技術者が行った役務提供取引とともに、親会社から提供された図面による技術ノウハウといった無形資産の移転があったことに由来するものと考えられます。
従って、この場合は、S社は、役務提供取引とは別に無形資産取引があるものと認識すべきです。
以上、無形資産取引の分類について書いてみました。次回は、無形資産取引の対価の把握について、触れてみたいと思います。
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