第六回:重機I社に対する移転価格課税の事案から考えたもの③
今回は、無形資産取引に対する移転価格の課税強化の動向を見据えて、納税者の視点でどのように考え、どういう対策を打つべきかを述べたいと思います。
4)納税者の視点で考えた場合
多国籍企業で、技術等の無形資産を有する日本親法人は、移転価格課税による追徴税額が巨額になりがちな無形資産取引に対しては、令和2年4月1日から適用開始となった無形資産取引に関する特にその移転価格の課税に起因する多大な経済的二重課税の負担を十分に認識し、自社の無形資産取引の整理・整備(文書化)を早いうちに着手すべきです。
無形資産取引の認識及びその独立企業間価格の算定については、移転価格税制上の対象取引の中でも、他の国外関連取引と比較して、難関と言われています。その難しさは、課税当局にとっても同様のものと言えます。ただ、独立企業間価格の算定に欠かせない情報収集の観点からは、課税リスクを心配するよりはむしろ、取引内容等を誰よりも熟知している納税者こそは、その潜在的リスクを積極的に自ら洗い出し、必要に応じて、事前に自己防衛策を講じてリスクに備えられる有利な立場にいるかと著者は思います。
具体的に、その有利な立場をどのように利用し、とりわけ無形資産取引に係る潜在的リスクを軽減させることができるかについて、述べたいと思います。
手順としては、大きく分けると、下記二つとなります。
❶無形資産取引の有無を特定すること
❷必要に応じて文書化を行うこと
次回は、❶について、著者の私見を含めて書きたいと思います。
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