第七回:無形資産取引の特定について
今回は、移転価格税制における対象取引の一つである無形資産に係る国外関連取引(以下「無形資産取引」をいいます。)の特定について書きたいと思います。
無形資産取引を特定するには、下記3つの要素を把握することが必要です。
1. 無形資産の定義・範囲
2. 無形資産取引の範囲
3. 多国籍企業グループのビジネスモデル及びその価値創造に関連する無形資産に係るビジネス戦略
まず、1. 無形資産の定義・範囲については、下記通り令和元年の税制改正によって法整備されております。
(措法66の4⑦二号、措令39の12⑬)
「無形資産とは、特許権、実用新案権、その他の資産のうち有形資産及び金融資産(現預金、有価証券等)以外の資産で、その譲渡・貸付等の取引が独立の事業者の間で通常の取引条件に従って行われるとした場合に対価が支払われるべき資産をいいます」
上記の下線部分にフォーカスして考えれば、移転価格税制上の無形資産は、第三者間の取引において商業的価値が認められる有形資産と金融資産以外の資産ということができます。
つまり、移転価格税制上の無形資産の範囲は、会計上の無形資産の範囲に限定されておらず、会計上の無形資産も直ちに移転価格税制上の無形資産になるわけでもありません。移転価格税制上の無形資産は、同業他社より高い競争力を有し、所得の獲得に貢献できる独自のユニークさを有しているのが特徴です。例えば、収益の増加に貢献する独自の販売網、費用の削減に貢献する独自の製造プロセスが移転価格税制上の無形資産に該当します。
更に、無形資産のうち、「特定無形資産」という特殊のものがあります。
次回は、この「特定無形資産」について述べたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本ブログの内容は、筆者の個人観点であり、如何なる助言への使用による責任を負いません。
また、本ブログの内容は筆者の著作権に属しており、無断複写(コピー、スキャン、デジタル化など)を固くお断りします。